宝石サンゴについて
現在、日本ではほとんど宝石類の産出がありませんが、サンゴと真珠だけは例外で、日本がその主産地であるということが世界的に認められています。
特に高知県で採取されている赤珊瑚は世界的にも評価が最も高く、ヨーロッパのバイヤーたちからは『TOSA(土佐)』と呼ばれ、美しい赤珊瑚の代名詞にもなっています。
宝石珊瑚
サンゴは真珠や琥珀とともに、鉱物ではない有機質起源の宝石です。
宝石のほとんどが鉱物質であるのに対して、珊瑚は動物である『サンゴ』が作りあげる特別な宝石であるといえます。
宝石サンゴは一般的によく知られている造礁珊瑚とは別物になります。100メートル以上の深海で育ち、宝飾に使用できるようになるまでに数百年の歳月を要します。
造礁珊瑚
一般に造礁珊瑚(いわゆる珊瑚礁でテーブル珊瑚、すり鉢珊瑚、石珊瑚など)といわれているもので、熱帯・亜熱帯地方の沖縄、ハワイ近海などの浅瀬水深50mまで海水温度が20℃以上の太陽光線の届く浅い海岸線で成長します。
六放珊瑚類は、早いものでは1年間に7-8cm成長し、小さい穴があいており非常に柔らかいために宝飾品としては加工していません。
宝石珊瑚の歴史
宝石サンゴの歴史は2万年以上前にさかのぼります。
ドイツ、ヴュルテンブルクの旧石器時代(約2万5千年前)の遺跡から珊瑚の珠が発掘されています。起源は地中海沿岸にあり、古代ギリシャやローマでは幸運、幸福の御守りとして愛用されてきました。
最初は周辺のキリスト教国で珍重されるようになりました。やがて、ロザリオやネックレスなどの形になった珊瑚装身具が世界的な広がりを見せました。シルクロードを東上し、各地域で受け入れられ、世界3大宗教(キリスト教、イスラム教、仏教)でも御守りとして重宝されました。遣唐使などの往来が盛んになった7-8世紀に、王侯貴族の宝物として渡来しました。日本に現存するもので最も古い珊瑚は、奈良県の正倉院の御物の中で聖武天皇(在位期間724-749)が使用した王冠に珊瑚玉が用いられています。日本産の発見は徳川時代の末1812年、土佐藩(高知県)の室戸岬で発見されたものが始まりです。
宝石珊瑚と世界各地の由来
シルクロードを通じて日本へ伝えられた地中海珊瑚。また、日本産の珊瑚は土佐沖で採取されています。
イギリスやフランスでは珊瑚は安産や子供の健やかな成長のお守り、また悪霊払いとも伝えられています。
イタリアでは年末年始に赤いものを身につけると1年間無病息災、健康でいられるとし、地中海珊瑚や赤珊瑚などを身につけている様です。
また、古代ローマでも子供の幸運や健やかな成長のお守り、また魔除けや負傷避けのお守りとして兵士が珊瑚を持って戦場に赴いたと言われています。
有名な話としては十字軍の兵士たちが十字架とともに珊瑚を身につけていた、といわれています。
その他、インドでも護符、健康、邪眼除けとして、中国でも仏教の七宝のひとつとして魔除けに使う風習があります。
宝石珊瑚と王室
珊瑚は世界中にて古来より、宝石、またはお守りとして愛され伝わってきました。
様々な恵みを与えてくれる海の象徴ともいえる珊瑚は、その貴重性、美しさ、護符としての役割も強かったため多くの国々の王室にて時代を超えて重用されてきた歴史があります。
イギリス王室
珊瑚は女性に『繁栄』と『美』をもたらす宝石として愛され、エリザベス2世は誕生の際、皇太后からピンク珊瑚のネックレスをファーストネックレスとして贈られました。また娘の第1王女のアン・エリザベス1世も出産する際には安産のお守りとして珊瑚のネックレスを身につけていたといわれています。また風習として王女誕生から1年間、珊瑚のネックレスをベッドに提げておくようです。
中国 清代
中国では宝石としてはもちろんですが、仏教の七宝のひとつになるほど古来から特別視されてきました。その為、皇族が式典の際に使用する礼装にも使用されていたのです。
清代の中国では、大きな式典の際に皇族が身に着ける装身具に珊瑚が使用されており、皇帝が太陽を祭る儀式(祭日)を行う際には赤い服に紅珊瑚の首飾りを身に着け、皇后・皇妃たちが身に着ける3本の首飾りの内、2本は珊瑚の首飾りだったと伝わっています。
モナコ王室
モナコ王室に嫁ぎ、時の公妃となったかつての名女優、グレース・ケリーも珊瑚を愛用していたことが伝わっています。特に桃珊瑚のイヤリングを公務で愛用していた姿が多々見受けられました。
宝石珊瑚の種類
赤珊瑚
赤珊瑚は日本近海(主に土佐沖)と、主に地中海で採れるサルジの2種類となります。
その中でも最高品質のものは高知県沖で採取され血赤珊瑚と呼ばれています。血赤珊瑚は名前の通り、色が濃く、希少価値が非常に高い珊瑚です。枝の中央にフという白い部分があるのが特徴です。水深100?300mに生息しています。深く濃い赤色が特徴でハイジュエリー用として、世界的に高く評価されています。
パワーストーンとしての意味(赤珊瑚):身体を強く保ち、想像力と実行力を高める。
地中海珊瑚
地中海珊瑚はイタリアのサルジニア島近海の浅海(50m?)に多く生息している種類です。
水深が浅い為成長も早く、あまり大きくなりません。(大きな物でも高さ30cm程度) そのため珠などの小さなパーツに適しています。地中海珊瑚の原木には赤珊瑚や桃珊瑚で見られるフは存在しませんし、単一な色調をしているので色ムラも少ないです。
パワーストーンとしての意味(赤珊瑚):身体を強く保ち、想像力と実行力を高める。
桃珊瑚
その名の通りの桃色から、赤や白に近い色まで幅広い色合いがあります。フと呼ばれる白い部分があるのが特徴です。このフがなく、薄い色調かつ色むらがほぼないものをボケ、エンゼルスキンと呼ばれ希少価値が高いものとなります。
日本近海から台湾近海に広く分布しているサンゴで、宝石サンゴの中では最大になります。
彫刻用に使用されることが多く、アジアの民族衣装のパーツとしても使用されます。
パワーストーンとしての意味:純愛、忠誠、優しさを象徴。精神、魂に働きかけ、潜在意識を開花させる。
ボケ珊瑚
幻の珊瑚と言われほとんど採取されません。
美しいピンク色をしていて、ヨーロッパではエンジェルスキンと言われて珍重されています。
中でもホンボケと言われる桃珊瑚から採取される最上級の物は10年に1本採れるかどうかの極めて貴重なものです。
ピンク珊瑚
日本近海からハワイ沖、南シナ海、ミッドウェー海域など幅広い採取海域が存在しています。そのためさまざまな種類があり、ガーネット、ミス(ヒメ)、ミッド、深海などの通称があります。
桃珊瑚とは異なり、フは存在しません。色調はピンク色に白が混じったような淡いピンクから濃いピンクまであります。
パワーストーンとしての意味:純愛、忠誠、優しさを象徴。精神、魂に働きかけ、潜在意識を開花させる。
白珊瑚
白色を基調としますが、淡いピンク、象牙色のものもあります。主に日本近海に生息していますが、ハワイ沖にも生育しています。その中でも純白と言われる混ざり気の無い白は極めて少ないものです。
パワーストーンとしての意味:奉仕的で、犠牲的な優しさを象徴。純粋を意味し、幸せを呼ぶとされる。
ジュエリーに使われている主な珊瑚
宝石珊瑚
宝石珊瑚は深海に生息しており、1cm伸びるのに数十年の歳月を必要としています。非常に水圧の高い場所に生息しているため、硬度はモース硬度約3.5度で、人間の歯と同等の硬さがあるため、宝飾品に適しています。
竹珊瑚
比較的浅瀬に生息している六放珊瑚の一種で、染め珊瑚の材料などとして良く使われます。元々の色は白や生成りで揃った筋が見られるのが特徴です。
天然珊瑚ですが、天然宝石珊瑚(本珊瑚)ではありません。
数珠などで使用されることが多いです。
宝石珊瑚のお取り扱いについて
カワムラでご購入頂きました商品に関しまして、メインテナンスをさせて頂いております。
宝石サンゴの主成分は炭酸カルシウムで、汗や化粧品など酸性のものがくすみや変形の原因となる場合があります。使用後は、柔らかい布でから拭きして
下さい。温泉や入浴剤などには、腐食性のある硫黄などの成分や酸が含まれていますから、入浴時は外すようにして下さい。
宝石珊瑚の注意点
- 天然珊瑚は大変デリケートな宝石です。また珊瑚の主成分は炭酸カルシウムで、特に汗や果汁などの酸に弱い傾向があり、酸に触れるとくすんでくることがあります。
- 珊瑚は深海から引き揚げる際の、気圧差などでヒビが入ることがありますが、商品の破損、亀裂につながるものではありませんのでご安心ください。
- また天然素材の為、深海生息時に海の生物の住処となっていたためにできる、「ス」や「キズ」がある場合があります。(人為的につけられた傷ではありません)
- 同じデザイン・カラーのものでも、ひとつひとつお色が異なる場合があります。自然に育まれた天然珊瑚特有の色むらですので、宝石珊瑚の個性として世界にひとつだけのお色をお楽しみ下さい。